読書メモ「たった1%の賃下げが99%を幸せにする(城 繁幸著)」

| コメント(0) | トラックバック(0)


このエントリーをはてなブックマークに追加

何かを始めるということは非常に大きなエネルギーを必要とするものでして、ひとつ始めると、今までやっていたものがひとつ停滞するもんですよね! なんて、言い訳をしつつ、久しぶりの読書メモ。大量購入した書籍はまだデスクで山積みです。

1か月ぐらい前から読み始めていたにもかかわらず、いまさら読了した書籍。



本書は、いわゆる日本型雇用である「終身雇用制」がテーマです。

タイトルの通り、冒頭では、高賃金の45-55歳の正社員が受け取る給与総額の1%、4500億円を非正規雇用側に分配すれば、10万人の雇用を維持することも可能になるといった主張から始まりますが、大部分は、終身雇用がいかにして崩壊していったか、終身雇用の幣害といった点の解説に重きを置きつつ、それらに対して著者の見解を述べるスタイルで進みます。

同じような内容の繰り返しの解説の部分が多く、読み物としての面白さはあまりなかったですが、ただ、自分の父もそうでしたが、終身雇用といった、いまや幻想に近い制度には、実体験としては一切触れたことがなく、言葉では知っているけど実際どういう背景でそれが成り立っているのか? といった部分については、改めて、勉強になったかなというところ。

本書では、小泉改革についても触れられています。よく、小泉時代によって格差が広がったと言われますが、本書の主張によれば、それは誤りだということ。簡単に、引用しつつ適当に要約すると以下。

小泉内閣によって実施された派遣法改正は、非正規雇用という形で賃金水準を引き下げ雇用を創出することを狙ったもので、完全失業率自体は改善したし、派遣法を改正していなければ、よくてパートか期間工で雇われただけであり、製造業については、雇用自体が海外へ流出したはずである。もちろん、派遣法改正には問題がなかったわけではないが、それは、規制をゆるめてしまったことではなく、中途半端に非正規雇用だけを解禁したことによるものであるという話。正社員の賃金水準はそのままに、いわば「既得権益」にメスを入れることなく、非正規雇用だけを安く買いたたくこととが可能になってしまったための格差である。

ここについては、本書のタイトルの部分ともリンクする部分で、また既に崩壊しているはずの終身雇用の幣害が未だに残っている原因とも非常に密接に関連する部分です。

本書の主張は、既得権益にメスを入れた上での労働の再分配だと言えます。

日常的に感じる部分ですが、今の日本、あるいは今後の日本では、よりお金を持っている年配者(もしくは高齢者)=既得権益者が多数を占める(あるいは力を持つ)中で、国全体として手放しには成長しない、あるいは後退していく中、余ったパイを若い世代が取りあうといった構図になっています。小泉内閣の改革では、その点にメスを入れられなかったために、より状況が悪化した、あるいは改善しなかったというこということですね。既得権益にメスを入れないまま、残りのパイで労働の再分配を行ったという風に言い換えられるんじゃないでしょうか。

小泉内閣は、非常に分かりやすいビジョンがあったから、悪かった部分はあるにせよ、改革は成し遂げられたけれども、今の民主党には何らビジョンが見えないわけで、政治から、大きく世の中を変えられるのではないかといった期待は、非常にしづらい状況であるということも、今の世相を反映しているのでしょう。

自分自身を振り返ると、就職活動の類は一切せず、20代半ば過ぎまでフリーターでふらふらと過ごしており、いわゆる非正規雇用で生計を立て、また今でいう「格差」の下位のレイヤーに属する人間だったわけで、当時の不安感やら、あせりなんていうものは実体験として非常にわかる部分がありますし、また今は、雇用をする側にもポジションを置いていますので、どちらの立場もミクロの視点では理解がありつつも、全体を俯瞰した上での「雇用問題」「雇用政策」といった部分への示唆は全くなかった状態でしたので、本書の問題提起や解説は、勉強になりました。

まあしかし、今の自分のポジションでできることといったら、非正規雇用の創出や、雇用ではないにしても何かしらの収入を得る手段を提供するぐらいなもんで、世の中に与えられる影響というのは非常に小さいです。政治に期待するのが難しい世の中ですが、しかし、政治に頼るしかないもんかなぁとも思うジレンマ。


たった1%の賃下げが99%を幸せにする
城 繁幸
東洋経済新報社
売り上げランキング: 80644

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.enjoy-com.com/mt/mt5/mt-tb.cgi/842

コメントする

        

人気エントリー