読書メモ「地下鉄はだれのものか(猪瀬直樹 著)

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東京都副知事、猪瀬直樹さんの地下鉄は誰のものか (ちくま新書)を読みました。

本書の本論からは外れるのだけれど、本書の中で共感した言葉であり、彼の生き方を表しているなぁと思った一文を最初に記します。


疑問をもたなければ謎が設定されない。謎を設定したら解明すればよいだけのことだ。


本書は、東京都の地下鉄の在り方についての問題提起を目的としたものです。

僕自身、広島から東京に出てきて、地下鉄の複雑さには辟易としたものだけれど、「そういうもんだ」「長いものにまかれろ」といった精神でしょうか、何の疑いもなく、これまで利用してきました。

地下鉄の事業体が2つ存在していることも、普段あまり意識しなかったですし、なんかメトロ(営団地下鉄)から違う地下鉄(都営地下鉄の方はあまり利用しないため、名前すら明示的に意識したことはなかったためこのような書き方)に乗り換えるとき面倒だなぁと漠然と思っていた程度でしたが、本書が触れている通り、本書で指摘されているようなシーンを思い起こしてみれば、メトロと都営地下鉄という二つの事業体が存在することによる、ユーザーメリットの損失は非常に大きいことは明白です。ましてや、実際に10年以上住んでいる僕ですら、「複雑だ」という印象を持つ東京の地下鉄事情を鑑みると、これを是とするのは宜しくないと感じるのは、至極まっとうなことだろうなという所感です。

本書の流れとしては、まず、たとえば僕のように、「漠然と地下鉄を利用しているだけで、なんとなく不便だなとは思いつつも、問題意識を持つにすら至らない人たち」に向けた、具体的な不便さの紹介から始まり、東京都副知事である猪瀬さんが、どのようにこの問題にアプローチしているのか、またそれらに対するメトロ側のお粗末な対応についてに触れつつ、そもそも公共の側面の強い地下鉄がどうあるべきなのか、にもかかわらず、現在メトロ側が進もうとしている方向性についての矛盾点などの問題点を挙げています。

それから、そもそもの首都圏の鉄道の成り立ちに関する話、私鉄経営と地下鉄経営がどのようなビジネスモデルで運営されているのか、またその違いは? といったところから、昭和初期ぐらいまでの地下鉄、私鉄やバスなどの交通網が形成されてきた経緯を、各企業を代表するキーパーソンたちに焦点を当てつつ、小説ライクに解説し、「なぜ、このような現状にいたったのか」という点に関する読者の理解を深めたところで、最終的に、鉄道、ここでは東京の地下鉄に関する公共性を改めて論述するというシナリオ。

毎日のように利用している地下鉄ですが、それらがどういった経緯を経てここまで発展してきたのか、副都心線で、新たな路線の開発が終了している現状はどういう思惑が働いてそうなっているのかといったことは全く知る由もなかったですし、知ろうともしなかったわけです。また、株式会社であるメトロは、そもそも国と都が株式を保有している半国営状態であるといった根本的な部分に始まり、その上で、メトロが早期の上場を目指しており、それは、ユーザーの利便性には一切よい影響を与えないであろうという点など、今まで無知・無関心であったことを恥ずかしくなるような、そして、こういった問題を知ることができたというだけでも、本当によかったなぁと思えるような内容満載の内容でした。

猪瀬さんのいくつかの書籍と、Twitterでの発言をみる限り、東京地下鉄の問題については、行政に関わる立場としての一つの大きなライフワークになっているものと感じますが、道路公団民営化といい、こういった、大きな社会問題に対して、軽快な切り口で挑んでいく姿は、非常に好感が持てます。また、このような大きな社会の闇に対する取り組みをライフワークとして持てることは、非常に羨ましくも感じました。

これは、まったく偶然でも何でもなく、たまたま行政に携わるようになったからとかでは毛頭なく、冒頭に転載した言葉、

疑問をもたなければ謎が設定されない。謎を設定したら解明すればよいだけのことだ。

という精神があってこその、必然のものだなと強く思います。

普段ん生活するなかで、仕事上のことでもそうでだけれども、なんとなく、受け入れている不便さや矛盾、理不尽さって多いですものね。

本書の趣旨とは全く違う部分の記述ではあろうと思うのだけど、読了後、一番印象に残っていたセンテンスがこれでした。

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