読書メモ「ルポ 生活保護 貧困をなくす新たな取り組み(本田良一 著)」

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最近本読みが進んでませんでしたが、数週間かかってようやく読み終わりましたのでメモ。


昨今、ワーキングプアや格差社会といったキーワードを強く意識させられる時代になってしまいましたが、それらの最後のセーフティネットである生活保護について、少し勉強してみました。

本書は、生活保護制度が社会に出現する前の段階からの時代背景や移り変わりから、現代の実際の生活保護受給者の生活などを多数紹介する中で、生活保護によってどのように生活が改善されてきたかといった事例や、各自治体の取り組み、成功事例になりうると注目されている事例では、主に釧路などの取り組みを紹介しつつ、国内外、過去から現在までの色々な制度などに触れる形で、生活保護が今抱えている制度的な問題や、向かうべき道すじなどを提起しています。

生活保護には、不正受給の問題が付き物ですが、どのような制度であっても、それを不正に利用する人が一定数居るのは当たり前であるため、不正利用をする人や制度自体を問題視することはおかしいといった観点から、不正受給の問題は、あえて回避したと書かれています。

本書を読んで印象に残ったのは、以下5点。

  1. かつては、貧困を犯罪と定義し取り締まることで、貧困を無くそうとしていた時代があったこと
  2. 貧困は再生産、連鎖するものであるということ
  3. 生活保護費の給付世帯の学歴別割合が、学歴が低いほど高くなること
  4. 年金は生活を保障するものではなく、以前の所得の一部を補てんする程度のものという意味で設計されていたこと
  5. 給付付きの税額控除や、生活保護から住宅手当を独立させるという考え方

特に、貧困の再生産や連鎖、給付家庭に低学歴の割合が多いという点は、自分自身も、両親は共に中卒、大学進学は父親の大反対の中、母親が無理やり進めてようやく実現しましたし、その影響もあって、最終的に母親は自己破産、離婚、さらに借金へ......、という感じで家庭がぐちゃぐちゃになった経験を持ちますので、他人ごとではなく感じました。

実際、近しい親族は保護を受けていますし、一億総中流と呼ばれていたかつての日本からは想像できないほど、貧困層やその予備軍が増えていることは事実としてありますので、生活保護を含む、社会扶助制度については、近々に取り組んでいかなければならない問題だと、切実に感じるところです。

その他、気になるキーワードやセンテンスを、抜粋もしくは、要約して、メモとして羅列、残します。

  • 社会保障や社会福祉、とくに公的扶助の起源は1601年にイギリスで制定された救貧法
  • それ以前のイギリスでは、浮浪は犯罪として禁止されていたが、取り締まりの強化や重い刑罰では浮浪者は減らず、社会秩序を脅かす存在になっていた
  • 救貧法は浮浪貧民を個人的な問題ではなく、社会問題ととらえた
  • 貧困や失業は一地方ではなく、国家レベルで起こる。その責任は国家が負わなければならない
  • 「貧困の連鎖」「貧困の再生産」
  • 釧路市の共同調査では、生活保護を受けていない母子世帯で見ると、母親の年収や学歴が高くなればなるほど、子供には高校だけでなく、もっと上の高専や短大、大学へ進学させたいと思う母親の割合が増える傾向が浮かび上がっている
  • 2000年時点で日本の子供の貧困率は14.3%
  • ワーキングプアは生活保護基準以下で厳しい生活を余儀なくされている。逆に考えると、ワーキングプアからは、生活保護受給者が恵まれているようにも見える
  • 月収16,17万程度、年収210万程度のワーキングプアと比較すると、同じ境遇の人が生活保護を受けた場合、住宅扶助、教育費、児童扶養加算、冬季加算などを上乗せすると年収は285万円、さらには、保護世帯は国民健康保険料、国民年金、市民税などの負担がなく、実際の差額はもっと大きい
  • 年金生活者にも不公平感がある。支給額は月額6万5千円程度
  • もともと、基礎年金には最低生活を保障するという狙いはない
  • 1984年当時の衆議院社会労働委員会で、当時の厚生省年金局長は「基礎年金で老後の生活の大体全部が賄えるようにするのは無理であり、当初からそういう考えはとっていない。食費を中心にした基礎的な部分を保障する考えに立っている」と説明している
  • つまり、年金は、かつての所得の一部を支給するのが目的であり、高齢者の生活の重要な部分を占める医療、住宅、介護の問題に対応していない
  • 日本では公式の貧困ラインは存在せず、貧困率も調査されていなかった。国は貧困の存在を認めていなかった
  • 1964年までは貧困の調査をしていたが、その後高度経済成長、国民皆保険、皆年金体制の中で、貧困問題は解消されたとみなされた
  • その後、ようやく、2009年、10月、相対的貧困率を民主党が発表した
  • 貧困の連鎖、貧困の再生産の背景として、低学歴が浮かび上がってくる。主自体の保護世帯の学歴別内訳は、中卒65.4%、高卒30.6%、短大卒2.1%、不詳1.9%となり、受給期間も学歴が低くなるにつれて、長いという結果が出ている
  • 厚生労働省は、自治の助長の「自立」について、従来の経済的自立に加え、規則正しい生活など通常の日常生活を回復する「日常生活自立」、社会や人とのつながりを取り戻す「社会生活自立」を加えて再定義し、2005年度以降、各自治体に自立支援プログラムの作成を求めている
  • 1999年9月、イギリスのブレア首相は「2020年までに子供の貧困を撲滅する」と宣言し、低所得の子育て世帯、特にひとり親世帯に対して税額控除を行ったり、貧困家庭に無料の幼児教育や保育料への税制上の支援などを行う、福祉・生活の総合的な支援制度を導入した
  • その結果、2004年には、貧困状態の子供が98年より709万人減少し、280万人になった
  • ドイツでは、貧困家庭の子供の大学の学費を無料にしたり、月9万円程度の生活支援を受けられる
  • 日本でも、給付付き税額控除の議論が始まっている
  • 給付付き税額控除とは、所得税から直接金額を控除した上で、納めるべき所得税よりも控除が多くなれば、国から逆にその額分の給付を受けられる制度であり、高所得が優遇されている現在の所得税制と比べて、低所得者にメリットがある
  • 給付付き税額控除と最低保証年金に共通する課題は正確な所得の把握。それらの導入が検討されるたびに議論になり、1980年に導入がきまった個人番号制度は、実施されずに廃止された
  • これからの福祉政策についてのキーワードの一つは「住宅保障」
  • 生活保護から住宅扶助を分離し住宅手当とし、収入が生活保護基準より少し上だが、家賃を支払うのが困難な低所得者層に支給する
  • 住宅部分に関する第二の生活保護の位置づけ

以上、雑多なメモでした。

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