梅田望夫「ウェブ進化論 」 2009年にあらためて読んだ、まとめと所感

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梅田望夫さんの「ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか」を購入したのですが、オビに「ウェブ進化論完結篇」なんて書いてあるものだから、久しぶりに、もう一度前作「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」から読み直してみました。

気になった部分のまとめと、2005年当時のこの本を今読むことで感じた感想などを少し。

まずは、要点だけまとめ。いつも通りのメモです。

次の時代への三大潮流
(1)インターネット
(2)チープ革命
(3)オープンソース

その結果、リアル世界では成立しえない三大法則ともいうべき新しいルールによって、ネット世界は発展し始めた
第一法則:神の視点からの世界理解(全体を俯瞰)
第二法則:ネット上に作った人間の分身がカネを稼いでくれる新しい経済圏(ネット上のバーチャル経済圏)
第三法則:(≒無限大)×(≒ゼロ)=something(消えて失われていったはずの価値の集積。一億人から三秒弱の時間を集めることで、一万人がフルタイムで一日働いて生み出す価値を創出)

Googleのすごさ
(1)「世界中のあまねく情報をすべて整理しつくす」というビジョン
(2)インターネットの「あちら側」に情報発電所を構築
(3)その巨大なシステムをまったく新しい作り方で自制し、圧倒的な低コスト構造を実現
(4)アドワーズ、アドセンスにより、「知の世界の秩序の再編成」だけでなく、「富の再分配」のメカニズムまで作り上げた
(5)組織マネジメントへの新しい思想の導入
(6)多くのネット企業のどの会社とも全く似ていない

Google社員の言葉
「仮に世界政府というものがあるとして、そこで開発しなければならないはずのシステムは、全部Googleで作る。それがGoogle開発陣のミッション」

明確に意識すべき世代交代
Microsoftに代表される「こちら側」に構築された旧世代のコンピューティングスタイル。
Googleに代表される「あちら側」に構築された新世代のコンピューティングスタイル。

Microsoftやyahoo!が、情報発電所構築競争という意味で、Googleを追撃するのが難しいと考える理由
博士号を持つような最高に優秀な人材が、運用とか設備というような意味を持つ「オペレーションズエンジニア」と呼ばれる肩書きを持ち、日々の泥仕事を死に物狂いでやっているような会社であること。

Adsenseによる富の分配メカニズム
インターネットの本質である「中抜き」を初めて実現した。
末端の一人一人に向けて、貢献に応じて、きめ細かくカネを渡す仕組み。
既存の経済圏とはまったく異なる経済格差是正への取り組み。
膨大な数の急成長しているとても小さなマーケットをターゲットにしている。
膨大な数のスモールビジネスと個人がカネを稼げるインフラを用意する

Googleによる組織マネジメント
情報を共有することによって生まれるスピードとパワー。
Googleが目指すゴール「抜群に優秀な連中を集め、創造的で自由な環境を用意する。ただし情報を徹底的に共有した上で、小さな組織ユニットをたくさん作り、ここがスピード最重視で動き、結果として組織内で激しい競争を引き起こす」

全社員からアイデアを集め、全社員に共有し、ネット上で議論を尽くして優先順位を決めたら、小さなユニットで全力疾走する。

数千人の組織内の全員がありとあらゆる情報を共有することによって起こること「情報自身が淘汰を起こす」

ブログによる総表現社会
100人に一人はいるおもしろい人。
メディアの権威側は、「玉石混交だ」と批判形成。
玉を見出す技術の進化によって、メディアの権威側の態度も変わらざるを得なくなった。

自動秩序形成
検索エンジンの能動性という厳戒。
インプットする必要性のないアウトプットによる自動秩序形成、それによるブレークスルーが生まれることで、数千万もの表現者の母集団から、リアルタイムに、あるいは個の嗜好にあわせて、自動的に「玉」がより分けられて、必要なところに届けられるようになる世界。プロフェッショナルをプロフェッショナルであると認定する権威が既存メディアから、Googleをはじめとするテクノロジーに移行する。

インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞
「ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走りぬけた先では大渋滞がおきています(羽生善治)」

インターネットによって、さまざまなジャンルにおいて、かなりのレベルまでの知識や経験をショートカット気味に学習することができる。

所感
言うまでもなく、Googleによる知の再編成、情報の整理は、2009年現在も引き続き、あるいは加速度的に進んでいます。
その恩恵は、具体的に目に見える形で、日々受けていることが実感できますし、その勢いは、リアル世界の枠組みを破壊しかねないものであると言っても過言ではないぐらいのものを感じます。

実際、ブックサーチによる権利者との軋轢、ストリートビューによる一般の人のプライバシー権の侵害など、既存の枠組みをえぐるように進められるサービス展開は、時として問題になりがちでもあります。

しかし、多くのネット利用者たちが、Googleに対して悪いイメージを抱いていないのも、一方で事実でしょう。

その恩恵によって、自らの生活がどれほど豊かになるのかを気づき、新しい価値観を取り込んだ人と、既存の権益にすがり、あるいは既存の枠組みしか見えない、見る機会を求めようとしない人との違いは、ウェブの急速な発展によって、ますます開いていくかもしれません。また、そこに気づいていない人たちを、どのような手法で取り込んでいくのかという点も、まだしばらくの間、議論されゆくことになるはずです。

テレビや車といった「恩恵」は目に見える形で存在しているから、当時の旧世代の人たちにも、それなりに受け入れられやすかったのでしょうけれど、今作られつつある新しい世界は、ウェブというバーチャルな世界にあるから、「知らない、気付かなくても不幸ではない」と感じる、あるいはそれすら感じずに過ごせる人との差が埋まりづらいという点もあるのでしょう。バーチャルだから、テレビや車のそれと同じような軌跡はたどりえない。けれど、急速にあちらの世界は、構築されつつある。

さて、僕自身、もっともその恩恵を受けているのが、本書にて称される「チープ革命」と、googleによって作り出された「ウェブ上のバーチャル経済圏」だと言うことができます。

非常に低コストで生み出されるサービスと、Googleによって提供される無償の収益源であるAdsense、そこに、Google、Yahoo!などの検索エンジンから、これもコストをかけることなく集客が可能なウェブの世界は、非常に多くの可能性を与えてくれています。お金をかけずに、毎月数十万人もの人が訪問してくれるバーチャル空間を自分が作り上げた時の喜びは、一口には表現できませんし、それが少しでもお金を生んでくれるとなれば、これほどの興奮はないとも思います。

実際に、今はそれで生計を立てていますし、また、仮に会社という組織に属していなかったとしても、そういった取り組みにチャレンジできるわけです。

僕が、「ちょっとした努力やアイデアで、これまででは考えられないほど多くの人に向かって何かを発信し影響を与えることができる」という事実に明確に気づき、意図的にそれを手段として利用し始めたのが、本書が書かれていたまさに最中であろう、ちょうど2005年でした。

Web2.0という聞きなれない言葉であふれかえり、新しい時代への分岐点だと、若いエンジニアの誰もが意気込んでいた頃。
Googleの時価総額が10兆円を超えた年。

変わり始めた時代がさらにその変化のカーブを大きくし始めた時期、あるいは、大きなうねりの中における少し大きな転換期に当たる年だったようにも思います。

当時、言葉だけが独り歩きした感のあった「Web2.0」は、本来の意味でのあり方に落ち着きつつあります。

チープ革命によって、驚異的なスピードでサービスをローンチできる時代だからこそ、多くのサービスが勢いよく乱立し、さながら戦国時代のような様相を呈することもあります。実際、僕の生きるネットコミュニティというさらに限られた世界の中でも、アバター、SNS、ミニブログなど、その時々にキャッチーなキーワードがあり、トレンドを先取りせんとする人たちの手によって、異常なまでの盛り上がりを見せます。しかし、見かけだけを模倣しトレンドに乗ったつもりだけの有象無象のそれらは、容赦なく淘汰されています。

システム開発の世界でも、2005-2006年は、どちらかというと技術論に走ったり、スピードのみがWeb2.0と言わんばかりの風潮を感じることがしばしばありましたが、最近は、目的を満たすための技術論、欲求の高まり続けるユーザーを満足させ続けるためのスピード、という本来あるべき姿に収まってきたという印象です。

もちろん、そういう時期があり、それらを経たからこそ、今があるというのも一つの真理なのでしょうけれども、三大潮流と三大法則を本当の意味で理解し活用することで、末端の一人一人のニーズをきめ細やかに、確実に満たしつつ、かつ着実に積み上げていくことが、次の10年と呼ばれた新しいウェブ時代を生きぬく術なのだと思います。

といいつつも、自分自身は、オープンソースという取り組みに限って言うと、今だにあまりその影響を実感できていない一人であったりします。みんなが善とは到底思えないウェブ上の現実をいつも見ているからなんでしょうか。






ということで、次はようやく「ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか」に目を通そうと思います。

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