2006年11月アーカイブ

広義の意味での「コミュニティ」が一般化する中、「炎上」という言葉を、頻繁に耳にするようになった。

それだけ、ネットリテラシのあまり高くないユーザーも気軽に情報を発信できるようになった証拠であり、また、それだけ、そのような情報に対して多くのユーザーが関心を持つようになった証拠でもある。インターネット、コミュニティの普及という意味では、大変喜ばしいことだ。

そういう状況も踏まえて、ここで、ごく当たり前のことではあるが、炎上を回避するための基本的な考え方を一度整理しておこうと思う。

今回は「wikiに書かれた悪評に対する、間違った対応に起因する炎上」を考えよう。

さて、wikiとは、誰でも気軽に情報を提供できるインターネット上の事典のようなものである。

ユーザーの善意によって多くの情報が提供され、それをさらに多くのユーザーで共有することができる。一昔前には考えもしなかったような構造ではあるが、いまやなくてはならない貴重な存在となっているのはご存知の通りだ。WEB2.0の概念を端的に表す、代表的なサービスと言えるだろう。

基本的には「性善説」をベースとしており、編集者皆が善意に基づいて正しい情報を提供することが理想とされるわけだが、当然、中には誤った情報や、あるいは、悪意を持って書かれた虚偽の情報、嫌がらせや中傷、名誉毀損につながりかねない内容も含まれる。

ここで問題なのは、その内容をまったく疑うことなく信じてしまうユーザーが、意外なほど多いということだ。

そのため、悪意をもって書かれた情報の対象者、特に、これが企業や公人であれば、その社会的影響を憂慮し、何らかの対応をしようと躍起になる。

では、このような書き込みを受けた場合、あなたならどうするだろうか。


1.ブログやオフィシャルサイトを通じて、反論記事を発表する
2.何度悪意ある書き込みをされても、自分で正しい情報に編集し続ける
3.wikiの管理者に削除を依頼する
4.放置、傍観する


いかがであろう。

ここで、私の考える結論を述べると、1、2に関しては悪い対応例だと言える。3は対応されるのであればベストケースとなるが、対応してもらえない可能性も視野に入れておくべきだろう。取り急ぎの正しい解答例としては4となる。

では、その根拠について、順番に見ていこう。

1に関しては、既によほどの影響を与えてしまっているのであれば別だが、少々こっけいな印象を受ける。そもそも、wikiというのは「誤った情報が掲載される可能性がある」ことを前提としており、その記述が「誤っていた」からといって、わざわざ企業などが、公的な見解を出すこと自体、大げさではないだろうか。

wikiもブログも、いわば同じ、一ユーザーの書き込みであり、仮に一般ユーザーが書いたブログに対して、企業のオフィシャルサイトなどで反論記事を投稿するシチュエーションを考えれば、分かりやすいだろう。

また、公的に触れることで、仮に事実無根の情報だったとしても、「そういう書き込みがされていた事実」自体はより多くの人に伝わり、結果として、風評被害を大きくする原因となりかねない。


2に関しては、最悪の対応だと考える。一般的なコミュニティサイトにおける「荒らし行為への対応」を例にとってみれば分かりやすいのだが、荒らし行為に対して、同じユーザーの立場で批判や必要以上の反応を行うことは、荒らし行為を助長する結果となる。荒らし行為に対しては、「常に無視し続けること」のみが有効な対応方法だ。荒らされているユーザーに何の反応もない以上は、荒らし行為自体が成立し得ない。

自分が管理者である場合は状況が異なるが、つまり、「悪意ある書き込みに対して、同じwikiユーザーという立場で、削除し続ける行為」というのは、相手に対して、「悪意ある書き込み行為が一定の効果を得ている」ことを認識させる行為でもあり、さらなる悪意ある投稿を助長してしまう結果となるのだ。

このような行為を執拗に行うユーザーの中には、やはり時間を持て余しているユーザーも多く、そのような場合には、どうしても監視の時間間隔で負けてしまい、結果として、せっかく編集しているのに、不当な情報が表示されている時間の方が勝ってしまう、ようなことも想定される。


また、第三者に、このような、いたちごっこが行われていることを知られてしまうことで、その情報の事実如何に関わらず、「都合の悪い情報は隠す企業だ」という風評が広まってしまい、最悪炎上を招いてしまうことにもなるだろう。

さらに、削除編集作業をオフィスからやっていた場合、「企業ぐるみの隠蔽工作」などというレッテルを貼られてしまうことにもなりかねず、もはや影響範囲は計り知れない。

そういう意味で、もっともやってしまいそうな「削除、編集」という対応が、もっとも悪い対応であると考えられる。

3に関しては上述したとおりなので割愛しよう。

最後に、もっとも決断しづらい方法ではあるが、今回挙げた中では4が、もっともベターな対応例であると考えられる。消去法ではあるのだが、削除対応ができないのであれば、傍観するしかないという結論は分かりやすいだろう。

だが、書き込まれている内容が明らかに虚偽である以上、いずれ善意あるユーザーによって正しい情報に書き換えられるだろうし、もしくは、ほとぼりの冷めた頃に、自ら正しい情報に書き直すということも考えられる。一定の期間が経過していれば、よほど粘着質な性格の持ち主でもない限り、気づかれる可能性も極端に少なく、再編集されるリスクも小さい。

以上の理由から、wikiに不当な情報を書き込まれた際のもっとも理想的な対応例は、管理者への削除依頼を行った後、投稿自体は傍観し続けるということになる。

もちろん、そのような不正な情報が原因となって、社会的に大きな影響を与えてしまっている、あるいはブログ等の口コミで急速に広まっているようなであれば状況であれば、悠長なことは言っていられない。何度かの警告、もしくは削除依頼の後、法的手段に訴えることも検討が必要にはなるだろう。


自分に対する悪意ある書き込みを前にしたとき、人は意外と冷静さを失ってしまうもの。wikiの情報も、多くの情報の中の一記事であることを考えれば、多くの場合、その影響範囲は極端に恐れるほどのものではない(過小評価することも危険だが)。そういうときこそ、一度冷静になって状況を判断するよう日ごろから念頭においておこう。
三洋電機社員によるプライベート写真流出事件」や「未成年者の飲酒運転告白による炎上、大学側の謝罪事件」などに代表される、会員の「名前」公開に関連する事件の影響を大きいと判断したためだろう、去る11月10日、mixiは「名前・年齢の公開レベル設定機能を追加実装する」と、告知した。

最近のmixiは、「個人情報の取り扱いについては、あくまでユーザー自身の自己責任である」というスタンスを露出することに終始しているが、今回もそれをより明確にする機能追加であると言えるだろう。

アップデート後の事後報告という形で告知を行うことが通例となっているにも関わらず、この程度の小さな機能追加で事前告知を行っていることから、事態収拾に向けた運営側の努力や焦りが、如実に見て取れる。

(ところで、後者の事件に関しては、大学側が謝罪すること自体、陳腐な印象を受けてしまう。これもmixiというサービスの急速な成長に対して、社会が追いついていないことに起因するのだろうが、これについてはまた別途触れることにしたい)



さて、mixiでは、自分を表す情報として「名前」と「ニックネーム」の二種類を登録することになっているが、mixiや、いわゆるSNS以外のこれまでのコミュニティサービスでは、ニックネーム以外に登録する氏名などの情報は、非公開情報として扱われてきた。そうでなければ、名前とニックネームの差別化が図れないし、そもそもインターネットで実名を公開するのは危険だという認識が、運営側にも利用者側にも、暗黙の、いや、公然の了解であったからだ。

しかし、SNSというサービスの多くは、それを真っ向から否定してきた。そして、SNSで初めてコミュニティサービスに参加したユーザーは、それを当然のこととして受け止めてしまった。mixiが急速に巨大化した結果、あまりリテラシの高いとはいえない多くの初心者ユーザーがこの落とし穴にはまり、公然の了解であった「実名の扱い」が崩れ去りつつあることが、このような事件を助長していると言えるだろう。

先日、mixiは「実名登録は義務付けていない」ということを告知したが、自分を表す情報として、「名前」と「ニックネーム」を登録させる仕様である以上、結果として本名登録を促しているようなものであるし、逆にそうでなければ、二種類の情報を登録させるという仕様に意味がなくなってしまう。

現段階でのmixiが公にしている見解は以下のようなものだ。

1.本名で登録することで、昔の友人、知人から発見されやすくなり、思いがけない再会ができる可能性がある

2.しかし、本名での登録は強制ではない

3.自分ではない別人の名前を付けると「なりすまし」や「騙り」行為と見なされてしまう場合がある
  ⇒要するに、偽名登録の場合、なりすましや煽りと判断すれば、しかるべき処罰を行う可能性があるということを示唆している

4.名前が本名である場合を想定して、友達や友達の友達にしか公開されないような公開レベル設定機能を追加する
  ⇒この場合、本名を登録しても、昔の友人、知人からは発見されなくなってしまう

すでにさまざまな矛盾が生じていることがお分かりだろうか。後付けでポリシー設定しつづけたた結果、「名前」の位置づけがますます微妙なものになっているのだ。

個人情報の公開は「ユーザー各位の自己責任」というスタンスを明確にしつつあるmixiではあるが、これで個人情報が絡む事件がなくなるとは想像しがたい。

もちろん、当然、このような事件が起きたからといって、mixiが「個人情報の流出」という名目で法的に罰せられることはないが、上場企業としてのイメージや、株価・広告収益への影響は無視できるものではないだろう。

今後、「名前」情報の存在自体が微妙なものとなり、また、トラブルをより助長していると判断されることにでもなれば、最終的に情報自体が削除、あるいは完全非公開化されていくのではないかと思う。もし本当にそうなれば、SNSの根本を揺るがしかねないが、あながち、あり得ないとも言えないのではないだろうか。

インターネットで「特定個人」が発言することは、それなりの高いリテラシを必要とするものだということを、われわれは、改めて認識しなければならない。
        

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